チタン締結部品は、高強度、軽量性、そしてステンレスでは不足する耐食性が同時に必要な場面で使われます。構造用ではGrade 5(Ti-6Al-4V)が主流で、ボルト、ねじ、スタッドはASTM F468、ナットはASTM F467で扱われます。この記事では、入手可能な形状、実際の機械特性、そして比較対象になりやすいステンレスやニッケル合金との違いをまとめます。

なぜTi-6Al-4Vが締結部品に使われるのか
チタン締結部品の価値は、次の3つの性質が同時に得られる点にあります。

- 比強度。 Grade 5チタンの引張強さは900-1100 MPa、密度は4.43 g/cm3です。高強度合金鋼ボルトと近い強度を持ちながら、重量は約57%です。A4-80ステンレス締結部品と比べても、約40%軽く、引張強さは大きく上回ります。
- 耐食性。 チタンは塩化物環境に強く、海洋や多くの化学設備で見られる孔食・すきま腐食に対して、ステンレスより有利です。海水、次亜塩素酸塩、その他の腐食条件でステンレス締結部品の寿命が短い場合によく選ばれます。
- 低磁性と医療分野での実績。 低磁性が必要な場面で選ばれることがあり、医療機器でもチタン合金は広く使われます。ただし、インプラント用途では合金種、清浄度、表面状態、規制対応を個別に指定する必要があります。
利用可能な頭部形状と構成
六角ボルト
DIN 931(半ねじ)およびDIN 933(全ねじ)の六角ボルトは、最も一般的な形態です。通常M5からM24まで対応し、それ以上は受注生産となります。フランジ接続、構造組立、設備固定など、レンチ締めが必要な用途で使われます。
六角穴付きボルト
DIN 912の六角穴付きボルトは、航空宇宙、モータースポーツ、精密機器でよく使われます。頭部を小さくしながら高い締付けトルクをかけやすいのが利点です。標準範囲はM3からM20です。
ボタンヘッド・皿ねじ
ボタンヘッド(ISO 7380)や皿ねじ(DIN 7991)は、低頭またはフラット面が必要な用途に向いています。レース車両の外装、船舶デッキ金物、医療機器ハウジングなどで見られます。
スタッドボルト・全ねじ棒
ASTM F468準拠の両ねじスタッドは、圧力容器や熱交換器フランジで使われます。化学反応器、クロルアルカリセル、オフショア配管など、母材自体が腐食環境にさらされる設備で指定されます。
六角ナット・ナイロンロックナット
ASTM F467準拠のGrade 5六角ナットは、DIN 934標準形やDIN 439薄形に対応可能です。DIN 985のナイロンロックナットは耐振動用途に適しています。ボルトもナットもチタンで統一すると、異種金属接触によるガルバニック腐食を避けやすくなります。
ねじ規格
チタン締結部品は、メートル系・インチ系の両方に対応します。

- ISOメートルねじ(M3~M24): 並目が標準在庫、細目は受注対応が一般的です。工業用途や欧州仕様では主流です。
- UNC / UNF: 北米設備や航空宇宙用途で必要になります。一般的には#6-32から1"-8 UNC程度まで扱われます。
- ねじ等級: メートルでは6g/6H、ユニファイでは2A/2Bが標準です。精密用途向けに3A/3Bなども対応可能です。
機械特性 — ASTM F468 Grade 5 締結部品
引張強さ: 900 MPa以上(一般的には950-1100 MPa)

降伏強さ(0.2%耐力): 830 MPa以上
伸び(4D): 10%以上
断面収縮率: 25%以上
密度: 4.43 g/cm3
硬さ: HRC 30-36
せん断強さ: 約550 MPa
使用温度範囲: -54°C ~ +315°C(315°C超ではクリープと酸化に注意)
Ti Grade 5 とステンレス、Inconel 718 の比較
腐食環境や高性能用途でよく比較される材料との違いは次の通りです。
引張強さ: Ti Gr.5 — 900-1100 MPa | SS 316 A2-70 — 700 MPa | SS 316 A4-80 — 800 MPa | Inconel 718 — 1240 MPa
降伏強さ: Ti Gr.5 — 830 MPa | SS 316 A2-70 — 450 MPa | SS 316 A4-80 — 600 MPa | Inconel 718 — 1030 MPa
密度: Ti Gr.5 — 4.43 g/cm3 | SS 316 — 7.98 g/cm3 | Inconel 718 — 8.19 g/cm3
塩化物耐食性: Ti Gr.5 — 優秀 | SS 316 — 中程度(温海水で孔食) | Inconel 718 — 優秀
最高使用温度: Ti Gr.5 — 315°C | SS 316 — 800°C | Inconel 718 — 700°C
磁性: Ti Gr.5 — なし | SS 316 — わずかにあり(加工硬化時) | Inconel 718 — わずかにあり
相対コスト: Ti Gr.5 — 高い | SS 316 A2-70 — 低い | SS 316 A4-80 — 中程度 | Inconel 718 — 非常に高い
要点は明確です。チタンは軽量性と塩化物耐食性に優れ、Inconel 718は絶対強度と高温特性で優れます。ステンレスA4-80は、腐食条件が中程度で重量が問題にならない場合のコスト重視案です。
業界別用途
海洋・オフショア
海中設備、船舶排気系、淡水化設備、オフショア配管などで使用されます。軽量性、海水耐食性、疲労特性の組み合わせが長期使用で有利です。
航空宇宙
機体接合、着陸装置、タービンケーシングなどでGrade 5締結部品が使われます。航空用途では完全なトレーサビリティが求められ、NASやNASM規格で製作されることが一般的です。
化学プロセス
チタン製反応器、熱交換器、配管のフランジ接続では、異種金属接触腐食を避けるためチタンボルト類が必要になります。この分野ではM16-M24のスタッドとヘビーナットがよく使われます。
モータースポーツ・医療
モータースポーツでは、M5-M10の六角穴付きやボタンヘッドで鋼製締結部品を置き換え、全体軽量化を図ります。医療用途では、標準Grade 5ではなくGrade 23(Grade 5 ELI)が使われることが多く、最終用途に応じた規格適合と検証が必要です。
表面仕上げの選択肢
- ナチュラル(切削肌・圧延肌): 標準仕上げです。チタン本来の酸化皮膜で耐食性を確保できます。
- 陽極酸化(着色): 酸化皮膜厚を制御して、青、紫、金、緑などの干渉色を出します。識別や外観用途に使われ、膜厚は薄く寸法への影響は小さいです。
- 銀めっき・ニッケルめっき: 高温航空用途での焼付き防止に使われます。タービン周辺のチタンボルトでは銀めっきが代表例です。
- ワックス・PTFEコーティング: 組立時の焼付き防止用潤滑です。チタン同士、またはチタンとステンレスの乾式締結では特に有効です。
焼付き防止の実務ポイント
チタンは焼付きやすい材料です。乾いた状態でチタンボルトをチタンナットへ締め込むと、ねじ面が圧力下で凝着し、外せなくなることがあります。実務では、耐焼付き剤、適切なめっき、ワックス/PTFE潤滑のいずれかを、使用環境に合わせて選ぶのが一般的です。
FILTUREでは、ASTM F468/F467に基づくGrade 5チタン締結部品を、M3からM24まで供給しています。六角ボルト、六角穴付きボルト、ボタンヘッド、スタッド、ナットに対応し、特注長さや特殊頭部、表面処理も相談可能です。詳しくはチタン締結部品カタログをご覧いただくか、仕様を添えてお問い合わせください。