チタンは、化学設備、海洋機器、航空宇宙、医療機器向けのカスタム加工部品でよく指定される材料です。一方で、加工をきれいに仕上げるのが難しい金属のひとつでもあります。この記事では、代表的な純チタンGrade 2と合金Grade 5(Ti-6Al-4V)について、選定の考え方、公差、表面仕上げ、発注時に指定すべき後処理を整理します。

チタン加工が難しい理由
同じ形状でも、チタン部品の見積がステンレスの3-5倍になることがあります。背景には、CNC加工における以下のような要因があります。

- 熱伝導率が低い(Grade 2で6.7 W/m-K、Grade 5で6.6 W/m-K)。 比較として304ステンレスは約16 W/m-K、6061アルミは約167 W/m-Kです。熱がワークに逃げにくく、工具先端に集中して摩耗が早くなります。
- 加工硬化しやすい。 刃物が切れずに擦ると表面がすぐ硬化し、次工程でさらに削りにくくなります。高剛性の段取り、鋭い工具、安定した切り込みが重要です。
- 高温で反応性が高い。 およそ500°Cを超えると、チタンは酸素や窒素と反応しやすくなり、超硬工具に溶着しやすくなります。低めの切削速度、高圧クーラント、頻繁な工具管理が必要です。
実務上は、チタン合金の切削速度は30-60 m/min程度で、オーステナイト系ステンレスの100-200 m/minよりかなり低くなります。加工時間が長くなり、工具コストも上がるため、チタン加工に慣れた工場かどうかが仕上がりと価格に直結します。
Grade 2 と Grade 5 の使い分け
選定は、耐食性を優先するか、機械強度を優先するかというシンプルな整理で考えられます。
Grade 2 — 工業用純チタン
Grade 2は、化学設備や海洋分野で最もよく使われる実用グレードです。硝酸、クロム酸などの酸化性酸、塩化物環境、海水に対して優れた耐食性を持ちます。降伏強さは345 MPaクラスで、Grade 5より加工性と成形性に余裕があります。高荷重ではないが、腐食環境に耐える必要があるフランジ、継手、バルブボディ、熱交換器部品、計装ハウジングなどに向いています。
Grade 5 — Ti-6Al-4V
Grade 5は世界で最も広く使われるチタン合金です。6%アルミニウムと4%バナジウムの添加により、降伏強さはGrade 2の約2倍となる830 MPaに達し、高強度鋼に近い強度を持ちながら重量は約57%に抑えられます。耐食性に加えて高荷重性能が必要な航空機用締結部品、医療部品、高性能バルブステム、レース部品、海中コネクタなどに適しています。
Grade 2 と Grade 5 の比較仕様
引張強さ(最小): Grade 2 — 345 MPa | Grade 5 — 900 MPa

降伏強さ(0.2%耐力、最小): Grade 2 — 275 MPa | Grade 5 — 830 MPa
伸び(最小): Grade 2 — 20% | Grade 5 — 10%
密度: Grade 2 — 4.51 g/cm3 | Grade 5 — 4.43 g/cm3
熱伝導率: Grade 2 — 6.7 W/m-K | Grade 5 — 6.6 W/m-K
弾性率: Grade 2 — 103 GPa | Grade 5 — 114 GPa
硬さ: Grade 2 — HRC 20前後 | Grade 5 — HRC 36前後
被削性: Grade 2 — 中程度 | Grade 5 — 難加工
ASTM規格: Grade 2 — ASTM B348 / B381 | Grade 5 — ASTM B348 / B381
実現しやすい公差と表面仕上げ
チタンCNC部品でどこまで精度を出せるかは、形状、設備、加工経験で変わります。実務上の目安は次の通りです。

- 一般加工公差: +/-0.05 mm。多くの機能面やボルト穴パターンに対応できます。
- 精密公差: +/-0.02 mm。重要な内径、シール面、嵌合面で現実的です。段取りと仕上げ工程が増えるためコストは上がります。
- 厳しい公差(研削・放電加工併用): +/-0.005 mm程度も可能ですが、工業用ろ過部品で必要になる場面は多くありません。
- 表面粗さ: 旋削・切削仕上げでRa 1.6-3.2 µmが標準的です。Ra 0.8 µmは仕上げ切削で対応可能、Ra 0.4 µm以下は研磨や電解研磨などの二次加工が必要になります。
図面上の厳しい公差は、本当に機能上必要な箇所だけに限定した方が合理的です。チタン部品は過剰公差にするとコストだけが増えやすくなります。
代表的なCNC加工チタン部品
フランジ・継手
ASME B16.5準拠または特注寸法のチタンフランジは、化学反応器、オフショア配管、淡水化設備で広く使われます。多くの腐食用途ではGrade 2で十分ですが、高い締付荷重や圧力等級が必要な場合はGrade 5が使われます。
バルブボディ・バルブステム
丸棒や鍛造素材から加工されるチタン製バルブ部品は、クロルアルカリ、漂白、海水冷却系など、ステンレスが孔食やすきま腐食を起こしやすい用途で有効です。
カスタムコネクタ・アダプター
計装継手、センサーハウジング、ねじ付きアダプターは、少量のチタン加工品としてよく見られます。精密内径と標準ねじ(メートルまたはNPT)を組み合わせるケースが多い部品です。
フィルター・スパージャー部品
焼結金属フィルター用のエンドキャップ、コレクターチューブ、サポートリングなども代表例です。多孔質媒体と組み合わせるため、シール面の仕上げ管理が重要になります。
加工後の表面処理
切削後のチタンはそれ自体で高い耐食性を持ちますが、用途に応じて追加処理が行われます。
- 酸洗い・化学洗浄: 鉄汚染、加工残渣、ヒートティント除去に使われます。使用する薬液は、材質グレード、仕上げ目標、下流用途に合わせて決める必要があります。
- 電解研磨: 表面の薄層を電気化学的に除去し、Raをおおよそ半減させ、洗浄しやすい表面を得ます。医薬や半導体用途でよく検討されます。
- 陽極酸化(Type II / Type III): 酸化皮膜を0.5-5 µm程度に厚くし、耐摩耗性改善や識別色付与に使います。ただし、アルミの硬質アルマイトのような大幅な硬化を与える処理ではありません。
- PVDコーティング(TiN、TiAlN): バルブシートなど摩耗が問題になる用途向けです。硬質表面層を付与できます。
図面に含めるべき項目
CNC加工チタン部品の仕様書・図面では、最低限以下を明記したいところです。
- 材質グレードと規格(例: Ti Grade 5 per ASTM B348)
- 重要寸法とその公差
- 表面粗さ要求(対象面のRa値)
- ねじ規格と等級(例: M12x1.75-6H)
- 後処理(不動態化、電解研磨、陽極酸化など)
- 検査要件(CMMレポート、3.1材質証明など)
FILTUREでは、Grade 2およびGrade 5のCNC加工チタン部品を、試作から量産まで対応しています。Baoji工場には高圧クーラント対応の旋盤・マシニング設備を備えています。詳しくはチタン加工部品ページをご覧いただくか、図面を添えてお問い合わせください。